老親と700キロ離れた一人っ子に起きたリアル(莉音)

一人っ子、遠方の両親が同時に倒れた。終末期医療・介護・死後事務・成年後見・「負」動産処分など。精神面や金銭面の話も書いていきます。時々脱線。どなたかの心に届きますように…

温かく心の器が広い人・2

#46 温かく心の器が広い人・2

X病院の窓からは、
遠くに海と島が見えた。
父にも見せたいと思った。

父は大部屋の通路側のベッド。

「父の脳に少しでも刺激を与えたいので、
できれば窓側のベッドに移動したいのですが・・・」

看護師さんに頼んだが、勿論だめだった。
そりゃそうだろう。

しかし、数日後、ある男性に話しかけられたのである。

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「毎日病院に来てるよね。お父さんの看病、大変だね。
ところで、お父さんは車いすには乗れるの?」

「乗れないんです。半身まひで、話も出来ません。
こちらの言っている事はわかるようですが・・・」

この男性、Yさんとしましょうか。
車いすに乗っていました。

「そうか・・・。じゃあ外の景色も見る事が出来ないんだね。
俺は車いすだから、外の景色を見に行く事は出来る。
お父さんと俺のベッドの位置、変わってあげてもいいよ」

Yさんは窓際、父は通路側のベッドでした。

「私も父に外の景色を見せてあげたいと思って、
看護師さんに頼んではみたんです。
でもダメだったんですよ」

「そうだったんだ。
じゃあ俺がもう一度頼んでみるよ。
俺、看護師さんにもストレートに物を言っちゃう方だから。
もし、ダメだったらごめんな」

Yさんは、毎日、私が父のベッドサイドで
身の回りの世話をしながら、

話しかけたり、囲碁YouTubeを見せたり、
音楽を聞かせたりしているのを
見ていたのだろう。

私以外は誰も見舞いに来ない。

たった一人で父親の世話をする私に
何か感じるものがあったのかもしれない。

数日後、
父は窓際に移る事が出来たんです。

寝たきりの態勢で、
どこまで外の景色が視界に入るかは
わかりません。

しかし、大きな窓から
自然の光を感じられることで
父の廃用症候群の進行度合いが
少しでもゆっくり進むことを祈るのみでした。

私はYさんのベッドにお礼を言いに行きました。
そこで、私は驚きのあまり、
涙を堪える事が出来なかったのです。
なぜなら・・・・・

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