老親と700キロ離れた一人っ子に起きたリアル(莉音)

一人っ子、遠方の両親が同時に倒れた。終末期医療・介護・死後事務・成年後見・「負」動産処分など。精神面や金銭面の話も書いていきます。時々脱線。どなたかの心に届きますように…

「早く良くなるといいですね」って言わないで

#43 「早くよくなって・・・」って言わないで

話しかけても、何も
返事も反応もしてくれない人に
ただひたすら話しかける・・・

これほど虚しく、悲しい事はない。

「廃用という状態ですね
もうお家には帰れないでしょう」

廃用症候群
転院前に、A市の大病院で脳外科医から言われた。
女性の脳外科医だった。

胸に付けられた名札の苗字を見て、
そして彼女が少し訛りのある話し方をしたことから

「この医師は、~~の出身だろうか。
聞いてみようかとおもった。でも違いないね」と
関係ない事を言っていた配偶者。

せっかく父の意識は戻ったのに、
少しは良くなるかな、話せるようになるかな、と
かすかな期待を持って臨んだ医師との面談なのに

やっぱり他人事なんですよね。

廃用という言葉に、
私がどれだけショックを受けたか・・・

廃用、もう良くはならないということ。
どんどん身体が衰えていくということ。
もう父とは話が出来ないという事。

両親、ほぼ同時に倒れて、母は急逝。
父が生きている事だけが私の心の支えだった。
もし同時に逝ってしまったら、
私はもう正常ではいられなかっただろう。

父は生きている
話をすることも、食べることもできない、
でも生きている。
こちらの話していることはわかるようだ。

一日病院の天井を見て過ごす父の世話をする人は
私しかいない。

この一心で生きていた。

寝たきりでもいい、一日でも長く
息をしてくれていれば
手を握る事ができれば
私の声が届いてくれていれば

B市への転院後、
ある集まりに出席した。
しばらく欠席していた月1回の集まり。

人が集まる場所は非常に嫌だった、苦痛だった。
楽しめる気分になんかなれない。明るく話すなんて無理。
でもなぜか、気分転換になるかなと思い、出てみた。

出なければよかった、後悔した。
事の顛末を話した後

「早く良くなるといいですね」
若い女性に言われた。

この言葉がどんなに辛かったか、言われたくなかったか。
悪気はないのだと思う。
若い人だから、
親が寝たきりになるという事が
何を意味するのか

医療関係者でもない限りわからないのだろう。
「普通の」病人ではないのだ。そうではないケースが多いのだ。

そんなとき、あなたなら
どんな言葉をかけますか?

無難なのは
「お大事に」
「お父様、お大事にして差し上げてくださいね」
「大変ですね」
「莉音さんも、お疲れが出ないようにね」
かな?

私なら
「お父様、穏やかに過ごせますように」
「穏やかに過ごせるといいですね」

同じようなケースならば、このように声掛けをしたい。

みなさんは、どう思いますか?