老親と700キロ離れた一人っ子に起きたリアル(莉音)

一人っ子、遠方の両親が同時に倒れた。終末期医療・介護・死後事務・成年後見・「負」動産処分など。精神面や金銭面の話も書いていきます。時々脱線。どなたかの心に届きますように…

もう、父には隠せなくなりました・・・

#32 

父をB市へ搬送する日程が決まった時、
父にどうしても伝えないといけない事がありました。

母の死です。
1か月前に、同じ病院のCCUで亡くなったのです。

母は、父が倒れてから5日後に
心臓を押さえて、苦しみながら倒れました。
私の誕生日の夜、
翌日にはB市に戻る予定だった私。

今思えば、父が
「お母さんを看取りなさい」と
私を両親の住むA市に呼んでくれたのです。

一日でも私が早く戻っていたら、
母は孤独死です。

これは運がよいという事なのでしょうか?

「お父さん、あのね・・・」
涙で言葉が出てきません。

「お母さんは、病院に来れないんじゃないの。
亡くなったんだよ。1か月前に」

父の顔がくしゃくしゃになりました。
脳出血で半身まひ、言葉は出ないのですが、
こちらの話はわかるのです。

こんな顔は初めて見ました。

「お母さん、心臓が悪かった。
私がしっかりとこの病院に運んで、看取ったよ。
葬儀もちゃんとしてあげた。

お父さんが私をこっちに呼んでくれたから、
私がお母さんを
看取る事ができたんだよ。
お父さん、ありがとう・・・・」

夕暮れ
高層階にある脳外科の病室の窓からは、
JRの線路の向こうに広がる夕焼けが、
いつもより黒ずんで見えました。

涙でかすむ視界・・・・
遠くにぽつんと富士山のシルエットが。

日本一の山がとても小さく映る窓を眺めながら、
私の心はずっとずっと寂しいままでした。